2014年11月22日土曜日
旦那の受賞、新アンサンブル創設、などなど。。。
先日、れじとん(旦那)がフランス学士院から「デル・ルカ財団賞」という大きな賞を頂きました。
れじとんがフランス学士院から表彰されるのはこれが3度目。
最初の賞は16年程前だったかな、、、「ピエール・カルダン賞」という、若手芸術家を奨励するための賞でした。その表彰式典出席のため、生まれて初めてフランス学士院に足を踏み入れた、当時まだ若くてフニャフニャだったれじとん&私(笑)。オリーブの刺繍に彩られた礼服に身を包む蒼々たるアカデミシャン(芸術アカデミー会員)達や、フランスの文化の中枢ともいえる学士院の荘厳たる雰囲気に只々ビビりまくりだったような記憶が(笑)。。。
で、今回頂いた賞ですが、、、
元々科学部門と美術部門のための賞だったのが、今年から音楽創作部門も新しく加わり、表彰セレモニーで受賞作曲家の新曲初演を行う、といったものでした。
上の写真、、、左側がアカデミシャン達の席なのですが、一番左端にピエール・カルダン氏が座ってらっしゃいますね(笑)。
式典後、友人でフランス史上初の女性作曲家アカデミシャンでもあるエディット・カナ・ド・シズィー女史、れじとんの作品を出版しているルモワンヌ社の社長、ピエール・ルモワンヌ氏と記念撮影!
アカデミシャンは、絵画部門、彫刻部門、建築部門、文学部門、映像部門、作曲部門、などからそれぞれ数名ずつ選出されます。終身会員制なので、会員が亡くなると新しい会員を選出するわけですね。でもって、選出されると、それぞれのアカデミシャンが好きなデザインのオリーブ刺繍の礼服と剣をオーダーし、公式な式典には必ずそれらを身につけます。
エディットいわく「私は女性だから「剣」を持つのもどうかな、と思って、ブローチにしてもらったのよ。」
この写真ではわかりにくいですが、彼女の左胸にはヴァイオリン模様の入った(彼女はヴァイオリン奏者なので)見事な宝石のブローチが輝いているのですよ!
日本人の私がこんなフランス文化の歴史の真髄を間近に垣間みせてもらうなんて、ありがたいことですよね!フランスにしても日本にしても、世紀から世紀へ、世代から世代へ脈々と受け継がれて来た文化の伝統の重みは大切に受け止めたいものです。
それにしても、れじとん!よかったねぇ!! おめでと〜う!!!!!!!!
れじとんが、新作オペラやら、上の式典のための新作の作曲やらでバタバタとしてる間、私は私で、新しく創設するアンサンブルの立ち上げ準備を着々と進めておりました。
で、、、
先日そのアンサンブルの第一回演奏会が開催されました!
アンサンブルの名前は「Musica Universalis」。
なぜこの世に音楽が存在するのか?
なぜ人は音楽を必要としているのか?
「音楽が人類にもたらすもの、そして音楽の内包するこの宇宙にとっての根源的なものは何なのかを見つめ続けてゆこう」という願いを込めて、ギリシャの数学者&哲学者ピタゴラスが提唱した、宇宙の調和についての考察「天球の音楽」のラテン語訳から取りました。
「若い世代、特に子供達にもっとクラシック音楽や現代音楽を気軽に楽しんでもらう機会を設けよう!」というコンセプトのもと、優れた演奏者であり、同時に経験豊かな指導者でもある音楽仲間達に声をかけて結成したこのアンサンブル。
第一回目のコンサートのテーマは「ユーモア」。
いや別に、、受け狙いの作品ばかりを並べたわけじゃなかったんスよ(汗)。。
でも、ゲネプロの見学に来た小学校低学年の子供達140人が、スロヴェニア人現代作曲家の実験的作品《Voix instrumentalisée (器楽化された声)》の演奏中に腹抱えて笑い出し、場内大爆笑の渦になっちゃった時にはどないしよか、と思いました(笑)。。。
でも、ただ笑ってるだけではなくて、、、突然演奏が止むとみんなハッと息を呑むし、、リズミカルな曲の時にはみんな頭をブンブン振りながら拍子を取ってるし、、、。
スペインの古い歌「ラ・フォリア」を現代風に変奏した作品を聴いた後には、みんな積極的に手を挙げて演奏者のチェリストに質問の嵐!
「なんかね、聴きながらね、楽しいとか悲しいとか、色んな違う感情が浮かんで来たの」
なんて、そこらの批評家顔負けの感想を言う子もいたりして。。。
とにかく6、7歳の子供達が心から現代音楽の演奏会を楽しんでいるのが伝わって来て、演奏している我々にとってもこの上ない幸せなひとときとなりました。
「ブラヴォー!」と演奏者達に叫びながら、ニコニコと会場を去って行った子供達。
色んなものを沢山見て触れて、是非感性豊かで視野の広い人間に育って行ってくれれば、と願います。
まあ、そんなこんなで、今後Musica Universalisの活動も私のライフワークの1つとして続けてゆくつもりです。みなさま、どうぞよろしくお見守り下さいませ!
しかし、、、
新しい事を始めるって、結構エネルギー要りますね(笑)。
師匠のルイージさんが
「キミにはエネルギーが有り余ってるから大丈夫だよ!」
って言うから、まあきっとそうなんやろう、、つうことで頑張ろうっと!(笑)
大体師匠には初めて会ったときから良くも悪くも色々と見抜かれてるような気がします。
先日「私の性格に合ったフランスの作曲家は?」とメールしたら、ものの2分程で返事が来て、その内容があまりにも的を得ていたので思わず絶句してしまいましたもん(滝汗)。
私自身「人間観察」が大好きなのですが、、きっと師匠の「観察度」はその20倍位濃ゆ〜いのではないかと(笑)。。
ま、いいや。師匠のコトを話しだすと長くなるので、今日はこの辺でおしまい!(笑)
2014年11月9日日曜日
コンクールを受けてました
この3週間程、実は年甲斐も無く(笑)受験生生活を送っておりました。というのは、、、
9月いっぱい、れじとん(旦那)の新作オペラ初演のためストラスブール国立歌劇場にずーっといたのですが、その時に「こんな公募があるよ!」とスタッフの人に見せられたのが
「マルセイユ市立歌劇場副指揮者兼ピアニスト募集」の公示。
「今更副指揮者なんて。。しかもピアニスト兼、やないの。。。」
と、最初は全然乗り気じゃなかったのですよ。でも、れじとんが
「マルセイユ!ボクの故郷!一緒にマルセイユで過ごせる時間が増えるし、受けてよ!」
って言うし、、まあ受験準備の時間はあるし、、収入の足しにはなるし、、、。
でもやっぱりやる気になれない(苦笑)。。。
で、試しに(ファビオ)ルイージさんに相談してみました。
そしたら
「そりゃあ、是非受けてみなさい!ボクが準備を手伝うからチューリッヒにおいで!」
って言うやないですか(笑)
そーゆーことなら、つうわけで、、、
3週間みっちり勉強しましたですよ。
今回の公募、副指揮者兼ピアニストということで、試験の内容がちょっと変わっていました。
一次試験はピアノの実技。しかも課題が
オペラ
ワーグナー トリスタンとイゾルテより、2幕の愛のデュエット全部(少なくとも30分以上はする)
シュトラウス エレクトラより第一場
ヴェルディ ファルスタッフより、フィナーレのフーガ
ビゼー カルメンより ミカエラのアリア(その場で歌手を伴奏する)
オーケストラスタディ
ショスタコーヴィッチ 交響曲第一番のピアノパート全部
ストラヴィンスキー ペトリューシュカのピアノパート全部
全部弾くと1時間半位もかかるプログラムなんですよ!マジかよ!!!!(笑)
で、一次試験通過者のみ受けられるファイナルが
ワーグナー トリスタンとイゾルテより「イゾルテの死」(オケ版)
メンデルスゾーン 真夏の夜の夢 序曲
チャイコフスキー 交響曲第四番1楽章
ヴェルディ 運命の力 序曲
ビゼー カルメンよりミカエラのアリア(伴奏指揮)
以上の5曲をマルセイユ交響楽団を実際に指揮する、というもの。
私はここ最近ろくにピアノを練習していなかったので、まずは指のリハビリからのスタート。最初の2週間は毎日ひたすら音階のエクササイズを3時間+読譜を2時間!(泣)
でも、なかなか弾けない部分があったりするので、友人のドイツ在住ピアニスト濱倫子さんにスカイプでレッスンしてもらったりもして(笑)、そりゃもうエラい騒ぎでした。。
受験を決めた当時、まだストラスブールにいたので、ストラスブール国立歌劇場に頼んで練習室を使わせてもらい、とにかく空き時間を見つけては、さらいました。。。
泣きそうになりながらも、ルイージさんがチューリッヒで待ってる事を思うと諦めるわけにもゆかず。。。
とにかく形にだけは仕上げて、チューリッヒへと向かいました。
チューリッヒ滞在中ルイージさんが気を利かせて、質の良いスタインウェイピアノが置いてあるチューリッヒ歌劇場の合唱リハーサル室で私が自由にピアノがさらえるように取りはからっておいて下さいました。ありがたや!
なもんで、ルイージさんがいない間、私はひたすらピアノを練習してたわけです。そしたら、色んな人が取っ替え引っ替え部屋に入って来るんです。
「ねえねえ、なんでキミ、ファルスタッフさらってるの?」って訊いて来る合唱指揮者。
「ペトリューシュカ!いやぁ〜、ボクも今それさらってるんだよ〜。キミ、上手だねぇ。素晴らしいよ!」って何故か褒めに来たコレペティのお兄さん(笑)。
チューリッヒ歌劇場のスタッフさん達、なかなか気さくですねぇ(笑)。
そんなこんなで、取り憑かれた様に練習してヘトヘトになった頃、ルイージさんがニコニコと現れて
「さあ!レッスンしよう!」、となるわけです(笑)。
ルイージ「で、何を準備しないといけないの?」
私「とりあえずはピアノの試験をパスしないといけないんですよ。今まで副指揮者の選抜試験でピアノの実技があったことなかったし、最近ろくにピアノをさらってないのでどうなることやら。。」
ル「じゃ、とりあえずピアノから見ようか。はい、ボクが横で指揮するからペトリューシュカ弾いてみて!」
スコアを見ながら指揮を始めるルイージさんに合わせて弾いてたら、途中でよくわからなくなった。。
私「すいません。よくわからなくなりました。。」
ル「だって今、ボクが振り間違えたんだもん。ごめんごめん。。」
ま、こんな感じで楽しく色んな曲を見ているうちに、ルイージさんも乗って来て
ル「ねぇ、ちょっとボクにも弾かせて!」
って、自分でもピアノを弾き始め、、、(笑)
ル「このパッセージはさぁ、運指が良くないから弾きにくいんだよ。」
と言いながら、弾きやすい運指まで書き込んで下さり(恐縮)、、
別の日には、自分が指揮する本番の20分前、「マエストロ、そろそろスタンバイして下さい!」というアナウンスが流れるまで、音楽監督室で指揮の仕方についてあーだこーだアドヴァイスを下さいました。同じ部屋の中にルイージさんの奥さんと一番下の息子さんもいて(笑)、私は邪魔してるようで早く終えないと!と焦ってたら
「ピアノピアーノ!!(落ち着いて!ゆっくり!)」
と、ルイージさんに諭されたし(笑)。
こんな感じでさんざんルイージさんにお世話になり、また勇気付けて頂きながら、いざ!試験に臨んだわけです。
受験者は総勢34人。
審査員は2人、いや、実質上は1人。
マルセイユ市立歌劇場の音楽監督、ローレンス・フォスターさんと、彼に付き添う歌劇場支配人。
ようするに、、フォスターさんの独断ぢゃないか!!(笑)
私は以前フォスターさんのアシスタントを務めたことがあり、その後受けた正式採用コンクールでフォスターさんは私を2番手にし、アメリカ人の男の子を1番手として採用した、という前科があるのですよ。。。
また同じ事が起こるような気がしなくもない、、と、思いながらも、まずは一次試験に挑戦。
私の顔を見るなり「お〜、知ってる顔だねぇ〜。」というローリー(フォスター)さん。
ローリー「キミ、どうしてボクがペトリューシュカを試験の課題に入れたかわかるかい?ボクは復讐したかったのさ。若い頃クリーヴランド響の副指揮者兼ピアニストの選抜試験を受けたんだけど、その時の課題がペトリューシュカだったのよ。審査員はジョージ・セル。で、ボクはその試験に落ちた。その時に採用されたのが誰だかわかるかい?ジェームス・レヴァインだよ。」
話しだすと止まらないローリーさん(笑)。
で、まあ、色々と弾かされたわけです。
試験を終えて会場を後にして1時間後くらいに、マルセイユ歌劇場から連絡。
「あなたは一次試験に合格しました。ファイナルに出場して下さい。」
えええええっ!!!私の受験番号は2番だったから、まだ全員受け終わってないはずなのに、もう「合格」ってか??!!(笑)
とりあえずルイージさんに「一次受かった」とメールを書くとすぐに返事が。
ルイージ「おめでとう!!ファイナルで指揮するときは、××と○○と△△に気をつけなさい。自信持って!」
でもって、2日後にファイナルの試験がありました。ファイナリストはフランス人2人、イタリア人2人、私(日本人)の計5人。
私がトップバッターで、朝の9時半の寝ぼけたオーケストラを45分間指揮しました。
審査員は、、、ローリーさん(笑)。
指揮し終わって、昼ご飯食べて、多少ビールまで飲んでたら、マルセイユ歌劇場から連絡。
「もう一回戻って来てチャイコフスキーを指揮して下さい。」
しょうがないから、あわててスーツに着替え直して歌劇場へ。
最後の受験者が終わった後に、何故か私がもう一回登場して10分間チャイコフスキーを指揮。
その後結果発表がありました。
案の定私は2番手で、フランス人の若い男の子が採用されました。
デジャヴ、ぢゃないか!!!(笑)
とりあえずルイージさんにメールで「すいませ〜ん。ダメでした〜。」とメールしたら、2分で返事が。
ルイージ「えええっ!ものすごく残念!!!!でもキミの資質はボク、よくわかってるからこのまま良い仕事して結果を出し続けてゆきなさいね。」
と、いうことで、、、マルセイユ歌劇場就職はなりませんでしたが、、、
冷静に考えると、
マルセイユの小さな市立歌劇場のポストの準備のために、ストラスブール国立歌劇場やらチューリッヒ歌劇場やらに大変お世話になり、濱倫子さんの貴重なアドヴァイスをもらい、挙げ句の果てにルイージさんにコーチしてもらった、という、、、
なんとも「シュール」な経験でした(笑)。
お世話になった方々、本当にありがとうございました。
続けて精進致します!!!
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